言葉で膨らむ思い出
昭和30年10月15日の夕飯時
今朝(H18・10・15 SUN AM6:30)、遠くから町内運動会開催の放送が聞こえてきた。同時にあちこちから、運動会開催の知らせだろう。はじけるような花火の音も聞こえてきた。
過って我町内も村中を空にして盛大な運動会が実施されたが、やがてスポーツ大会に変わり、それさえも絶えて久しい。
運動会の光景では、何故か茣蓙に正座しているおばあちゃん達の姿が先ず目に浮かぶ。
うちのおばあちゃんは、明治40年代の生まれで、ひとり松本弁で話し通した。
【家々の庭先や町内の路地づたいに遊んでいた子供たち】
さんざ遊んだし、そろそろおいはんになるで、けーるか。
うん、また明日あそべや。
そのカンカラ、おぞくなったでかえとけや。
うん あのがった小僧が蹴ると、すぐだめんなっちゃう。ちょんこづいててごーさわくから、いつ
かくらしゃげといたほうがいいぜ。こすやるしな。
おらほにいいやつあったかな?みつけてみる。
そのまえでのボタンもとめとけよ。おとついみてーに、かあちゃんにこづかれるぞ。
うん、じゃーあばね!
【夕飯時のちゃぶ台の前】~おばば
これ、裾がはだけてるじゃーねーか。早くてー洗ってこっちィあがれや。
じいちゃんは、ごしてーって言って先に風呂はいってるで、ちょっとまってろやな。
これ、そんなとこへうつかるじゃねー。障子がかしがるじゃねーか。ちゃんとおつくべしろや。
そのおてしょをとっとくれ。きびしょも。
ねえさんや、あすこの家のあねさな。子供連れてうちーいったってけど、けーてきたかや。
ずくのある人で、なんでもまてーにやってたで、ちょいっといなきゃはたけゃーささらほうさらだじ。
あだじゃーねーわな。こんぼこだいて、じじの面倒みて、学校にもとんでかにゃーならねーし。
がーたのしょうにゃーわからんずらけんども、もーらしいもんだ。
はーるかぶりにあにぁけーってきたちゅうに、じぶんとこの親がたおれちゃーな。
【夕飯】~じじ
とびっくら、早くなったかや。そうか。
せんせーのはなしよく聞いてな。いろはをしっかりかいときゃ字はきれーになるで。
ごたこいたり嘘こいたりすると、大神様のバチがあたるでな。
何でも、まてーに食べろよ。選り好みしてるとでかくならんぞ。
ごしてー時があっても、おんじょこくじゃねーぞ。
男はな、泣くな・笑うな・しゃべるなだ。泣くのは自分の子供が死んだとき。歯をみしてでけー口開けて笑うじゃねーぞ。べらべらしゃべるもんじゃーねーし。なるったけ我慢だ。いぼはつるなよ。
お!これが好きか。良いいい、じじのもくえや。わにんでもいい、ほれ。
おっとい角屋のお唐子が、コンチワとあたまーさげたがお前より上か。良い娘だ。
【電話】
まーず、このしゃら忙しいっちゅうにどっからだ。
ああ、畑が固くてな。てきねーから早くに風呂に入ったさ。
おっとい、柱かっといたで、なからのうちにゃーたたるずら。おてんきゃー悪いに、むりするこ
たーねーし。
ああ、そうしましょ。なるったけ早くやるよーにゃーいっとくで。
ああ、そいじゃー。
【ふたたび食卓】
早く食べりィ。片付かんじゃん。
ひとっきらたったら、風呂へへーれよ。
じじが入ったで、へー丁度よくなってるわ。なるったけうめなんでな。
ヨーコーザイは入れなんでいいで。
* 僅か50年前には、こんな松本言葉がそこここを飛び交っていた。
分かります?
思い出ってもんは、いろんな事から膨らむもんじゃーねーかい。
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